別府チェンバロ教室

美的感覚と豊かな感性、論理的思考力を養う

スカルラッティのソナタK56

このスカルラッティのソナタはスカルラッティがスペインのマドリードに滞在中の1729年より作曲された555曲のソナタの中の一曲である。

 

ハ短調の基音ドの力強いバスの一音の後、急速な上昇音階を経て下降する4度と減5度の分散和音がこの楽曲の性格を即座に提示する。

 

この俊足なテーマの後、俊回するようなモチーフが現れる。くるくるとその場で回転する駒のような同一のモチーフが3小節ほど繰り返された後、下降する分散和音の左手の上に、7度の和音を伴ったシンプルな旋律ラインが繰り返される。

 

その後、演奏家の手の動きの見せ場ともなる、右手と左手の交差が現れる。

 

その後、ハ短調のからト短調に転調し、力強いハ短調から、少し哀愁を帯びたト短調の旋律が現れる。

K56ソナタの第二部

ソナタの第二部にト短調のまま移って数章節で、初めて長調への転調が行われる。ト短調で現れた変ロ音を活かした形で、変ロ長調が現れる。三度で進行する柔らかな印象のメロディーラインは、ここまでの短調の音楽の口直しをするかのようだ。

記事の続きはこの下

 

 

左右の手の交差をしながら、色が変わるように基調であるハ短調へと戻る。

再びト短調に戻るが、今度のト短調は以前の哀愁をもはや漂わせず、ハ短調の力強さを踏襲する。

 

その後、並行6度で進行するハ短調のメロディーは、このソナタの初めのト短調への転調の時のような哀愁と柔らかさを帯びているが、すぐにこの楽曲の見せ場でもある両手のオクターブによる軽快かつ力強いパッセージが再び表れる。

左手はオクターブ音程による下降音階で、右手はオクターブ音程による上昇音階だ。右手と左手が逆行しながらオクターブで跳ねまわるメロディーラインは、俊足なスケールの冒頭部とディティールこそ異なるとはいえ、楽曲の性格としては同一のものを提示している。

形容詞でもって言えば、軽快俊足ながらアグレッシブさを兼ね備えたアレグロであり、イメージ的に言うならば、小さく黒い悪魔達がぴょんぴょん飛び跳ねて軽快に踊りまわっているような。

www.italiaryoko.net